ボーイズトーク15




同居していはずだったが、いつの間にか入江は家を出て自活してるらしい。
普通出ていくなら相原の方だろ。
相変わらずちぐはぐなことやっている二人だ。
もしかして、入江に恋人ができて、相原がいたんじゃやりにくいから家を出たとか?
え?やりにくいって、相原は入江一筋なわけだし、いろいろ気まずいんじゃ。
は?ああ、そっちね、そっちの意味かー。
ま、一人暮らしとなりゃ女の子連れ込み放題だよな。
もしかして相原には手を出せないからとか。
いや、むしろ相原なら入江の住まいに押しかけるだろうから、意味ないか。
ん?まさか相原が家族公認とは言え、逆に家族と同居じゃやりにくいから家を出ましたってことか?
うわ、何だよそれ。
どっちにしても天才様はウハウハじゃねーか。
相原もとうとう…。


 * * *


「で、相原と入江、また別れたって?」
「入江が家を出たくらいだろ」
「それで別れたって言うんなら、あいつらしょっちゅうくっついただの離れただの言ってるだろ。ただのバカップルだろ」
「自宅生って、いろいろやりにくいよな」
「あ、おまえ下宿生だっけ」
「だからと言って彼女いないけどな」
「そうか、無駄だな」
「というか、汚すぎて彼女呼べない」
「おまえ、一年経ってないのに呼べないほど汚いって、どんな生活してんだよ」
「だってよ、洗濯ものとか、空き缶とか、結構片付けるの大変じゃね?」
「そういうのを彼女に片付けてもらうってのも夢だよな」
「それ、彼女が一番嫌がるパターンだよ」
「でも世話好きなら」
「じゃあ、入江が家を出たからって、おまえと同じような生活してるとか思うか?」
「…なんだろう、清潔完璧な部屋しか思い浮かばないぜ」
「きっちりしてそうだよな」
「あいつ自炊できるのか?」
「えーと、確か須藤さんの話ではファミレスでバイト、とか」
「へー、あいつがバイトかぁ。女の客多そうだな」
「賄い付きのバイトはおいしいぜ」
「夕食代浮くもんな」
「相原が世話しに行ったりして?」
「相原がー?!」
「かえって汚しそうな気がする」
「うん、俺もそう思う」
「どうせ俺の所には母ちゃんしか来ねーぜ」
「母ちゃん来るのかよ…」
「汚いから片付けに」
「うっかり彼女呼べないな」
「部屋で彼女と母ちゃん遭遇パターンは避けたいな」
「せっかく一人暮らしなのに」
「アパートって壁薄そうだよな」
「丸聞こえじゃね?」
「いや、まあ、彼女いないしな」
「他の部屋から聞こえたりしたらうんざりだな」
「入江なんてそういう安アパートじゃないだろ」
「なんだかんだと坊ちゃんだしな」
「ていうか、自宅近いんだからわざわざ家出るなよ、もったいない。そんな金あったらうちの母ちゃんパート増やさねーし」
「え、やっぱり相原連れ込むために…?」
「うわあ、露骨」
「やっぱそっち?」
「いいなぁ、入江」
「どうせ文句言いながらも片付けてくれるのなんて母ちゃんくらいのもんだよな」
「しかも母ちゃん喜んでたりしてな」
「父ちゃんそっちのけで片づけに来そうだな」
「久しぶりにおふくろの味とか作って帰ったり?」
「冷蔵庫の中にタッパーで保存な」
一人がしみじみつぶやいた。
「ああ、彼女欲しいなぁ」
皆黙ってうなずいたのだった。

(2016/10/19)