If〜もしも入江くんが車なら〜(寒い朝編)
リモコンキーでピッ。
『………』
ピッ。
『………』
「ちょ、ちょっとぉ、何で開かないのよっ」
ドアをガチャガチャと引っ張る。
「もう!寒いんだからちゃんと開いてよ〜。
最近リモコンの調子が悪いのよね」
軽く足踏みしながら白い息を吐く。
「もう待てないっ。
あまり入れるの嫌だけど、キーで開けちゃおっと」
キーを鍵穴に差し込もうとする。
『やめろ、入れるな、傷がつく』
ガチャ。
「あ、開いた。
あ〜寒かった」
『昨日俺のシートにコーヒーこぼしただろ』
「あ、昨日のコーヒー、染みになってる〜」
『ちゃんと拭いておけよ』
「取れるかなぁ」
『足を開いて俺の上に乗るな』
「寒いから暖房付けようっと」
『そんなに強くしなくても、俺は十分暖かいぞ』
「さ、出発」
『…聞いてねーな』
『次は右だ、右』
「えーと、車線変更っと」
『そこだろ、そこ』
「あ、過ぎちゃった」
『ちっ、仕方がないから次を右に』
「えーい、ここで曲がっちゃえ」
『バッ…!何でそこで曲がるんだよ』
「どうしよう。ここどこかなぁ」
『そこで止まれ』
「もう一回戻ればいいんだ」
『ほらバックだ』
「うーん、後ろがよく見えない」
『止まれ!!』
ガッチャン。
「あ〜〜〜、電柱にぶつけちゃった!」
『いってーな!ったく、いい加減にしろっ』
「と、とにかく元の道に戻って…」
『よく見ろ、こっちだ、こっち』
「あ、戻れそう」
『だからそこを…』
「あ、あれ?」
…行き止まり。
『…なんでそうなる…』
(2009/02/26)