健診編



その1、琴子の健診編


「今日は健診なの」
「ふーん」
「入江くんもあるでしょ?」
「ああ、そう言えばお知らせの紙があったな」
「いつ?」
「○月○日だ」
「そうなんだ(ふむふむ○月○日ね)。じゃ、行ってくるね」

「最初は身長体重か…。
う、あたしちょっと太った?
えー、身長縮んでる〜〜。
もう一回測ってください。
え?ダメ?そんなぁ」

「次はレントゲンか。
金具のものはとるのよね。
ということはブラは確か取って…。
上着上着…。
あれ?紐が…。えーと、これがこっちで…。
あ、すみません、今行きます。
あれ?なんだか変。ま、いいか」
(検査着の合わせを反対にして着込む琴子)
「いやー、レントゲンで恥かいちゃったな。
そうか、交互に結ぶから、紐はこっちとこっちで結ぶのね。
そうか、だからこっちに紐がなかったんだ。気づかなかった〜」

「尿検査も済んだし、目の検査も楽勝だったな」
(廊下の向こうに豆粒ほどの直樹を見つける)
「あ、入江くんだ!!入江く〜〜〜ん、また後でね!
今度は聴力検査ね」

「ヘッドホンから音が聴こえる間は押し続けるのか。ふむふむ。
あ、あれ?なんだか、ずっと聴こえる気が…。あ、違うのか。
あれ?やっぱり。
え、えーと、今聴こえ…てないみたいよね」
(やたらめったら押したりやめたりで検査にならない琴子)
「ご、ごめんなさい。だって、なんだかよくわからなくなっちゃって…」

「ふう、終わった。さてと、次は採血か…。
あたし苦手なのよね、注射。刺すのも刺されるほうも嫌い」
「あら琴子さん」
「智子!あ〜、よかった。智子なら上手だもんね」
「さ、腕出してね。
ベッドじゃなくても大丈夫?」
「じゃ、じゃあ、ベッドで…」
(ただいま採血中)
「今日は係なの?」
「ええ、健診お手伝いの当番があったでしょ?
頼み込んで採血係に回してもらったの」
「そうなの?あたしも今度手伝うつもりなの」
「だって…(ブラック智子降臨)
こんなにたくさんの血を採れる機会って滅多にないんですもの。
もう、うれしくて、うれしくて…。
うふふふふふ、琴子さんの血液ってとても健康的で新鮮そうよね」
「そ、そう…?(やっぱり智子の趣味ってわかんない…)」

「あ、今度は胃のレントゲンか。
バリウム飲むの初めて〜。
朝から何にも食べてないんだもん、お腹空いちゃった」
(バリウムを手渡され、まずは食道の撮影)
「ゆ、ゆっくりね。ぐっ…
(ま、まずい!もう一杯!
…ってわけにはいかないわ、青汁じゃあるまいし)」
(半分飲んでげっぷを我慢)
「ゲフッ(…あ、げっぷしちゃったよ)
の、飲み直しですか…はぁ」
(げっぷをして胃内の空気が抜けたのでもう一度飲まされる。
以後二度繰り返す)
「(げ、入江くん…!なんでここに…!
意地でも入江くんの前でげっぷするわけには…!)」
(何故かレントゲン操作室に現れた直樹。必死でげっぷを我慢する乙女心)
「ふ〜〜〜、何とか終わったわ。
それにしてもバリウム飲みすぎて…うっぷ」
「よお、終わったか?」
「うん。もうバリウムたくさん飲まされて大変」
「ああ、だからか」
「何が?」
「奥さんがげっぷをして検査にならないから来てくださいと言われて、昼飯時なのに同期のヤツに呼び出された」
「ええっ」
「それじゃあ、行くからな」
「じゃ、一緒にお昼でも…」
「お腹、大丈夫か?」
「へ?」
「バリウムが人より多いから、大量に下剤飲まされてんだろ」
「そんなすぐに効かないわよ〜」
「ま、いいけど」
「じゃあ、食堂行こうよ。
あたしね、今日は…きょ、今日は…」
「…大丈夫か(もう来たか?)」
「う、うん…(もう効いたのかな…、お腹の調子が…)」
「無理するな」
「だって、入江くんとランチした…い…ご、ごめん…やっぱ無理かも…」
(そのまま走り去っていく琴子。
もよおしたのでとはさすがに言えない乙女心)
「…もう、やだ〜(あ〜〜、もう、入江くんとランチできるかもしれなかったのに〜〜)」
(無言でトイレへ駆け込む琴子。
一応周りも確かめて入る辺りはまだ自制心あり)
「ふ〜〜〜。とりあえずしばらく大丈夫よね」
(トイレから出た琴子。早速目の前に直樹を発見)
「入江くん、もう大丈夫だから、行こうよ」
「…呼び出されたから、軽く済ませたんだ。またな」
「え〜〜〜〜〜、そんなぁ」
「…それよりもおまえ、ちゃんとバリウム出たか?」
「や、やだ〜〜、入江くんの意地悪〜〜!!」
(腸にバリウムが溜まると危険です。
下剤はしっかり飲んですっきり出しましょう)

まだまだ夫婦でも言えないことたくさんの琴子でありました。
ただ、直樹は…
「何が意地悪なんだ?(俺医者だから平気だけど)」
…だそうです。


(2008/11/20)