斗南戦隊ホスピタレンジャー11




ある日突然それは訪れた。

「初めまして、これからよろしくお願いいたします」

新たなる研究員が大蛇森の研究室に入ってきた。
九月から院に入学した院生の一人だった。

イケメンだ…。

研究室の誰もが目を見張った。
久々に入ってきた研究員はやはりイケメンだった。

…イケメンしか入れないのか、この研究室は。

研究員それぞれがお互いに顔を見合わせる。
正直言えば、部屋の中にいるのはすべて標準以上のイケメンのオンパレードだった。
女子学生などは密かにスネイクモリンのイケメンパラダイスと呼んでいるくらいの研究室だ。
当初は熱心な女子学生も研究室にはいたのだ。
何も大蛇森は女子学生が特別嫌いなわけではない(多分)。
頭の悪い人間が嫌いなだけだ。でもできればイケメンのほうがいいとは思っている。
しかし、その女子学生がとある研究員と恋仲になったことで女子学生は一切お断りになってしまった。
何せイケメンパラダイス。
大蛇森ほど執着はないが、さすがにまともな神経の女子学生は一度や二度必ずくらっと来るくらいのハーレム状態だ。
おまけにあの大蛇森が自分の趣味でイケメンを集めているとなれば、普通の男子学生にとってもなおさら普通の女子学生はまともに見えて仕方がない。
研究室に詰めている状態で手近な女子学生と恋仲になってもおかしくはないだろう。いや、むしろその方がより健全であると言える。
一部の女子学生からは研究員たちが皆変態とまで思われているのだ。
中にはそういうものもいようが、とりあえず大方はまともなノーマル志向の人間だった。
いわゆる腐女子にはたまらないハーレムらしいが、そんなものに巻き込まれたくないと皆必死に研修室から逃げ出すために熱心なのだ。
おかげで大蛇森の研究室は非常に研究の質が良くて論文発表も盛んだと評判だった。

そんなわけで、イケメンがまた一人入ってこようと、ほかの研究員にはまたかとそれぞれに研究の手を休めたのはほんの一瞬だった。
しかし、彼にはわかった。

こいつはライバルになるだろう、と。

ちなみに「彼」とは、この研究室の中でも一番古株で、好き好んで研究室に入った者だ。
もしや、ダイジャーの幹部候補生か。

「彼はこの研究室で一番古株だ。彼にいろいろ教えてもらうといい」
「わかりました。では、よろしくお願いします」

そう言って新しく来た研究員は微笑んだ。

胡散臭い。

彼は直感でそう思った。
少し含みを持たせて握手を交わすと、新顔の研究員はそっと言った。

「まだ下っ端をやっていらしたんですね」

彼は驚いた。
初対面で勧誘することもなく、彼が下っ端その1であり、(自称)幹部候補であることを見抜いた者はいなかったのだ。

「見かけたことがあったんですよ、先輩」
「…ほう、君も狙っていると」
「結果的にはそうなるかもしれませんが、とりあえず下っ端その2でいいですよ」

その2でいいですよ、とは何たる傲慢な!
…と彼は思ったが、人手は足りないので口には出さなかった。
そもそも彼以外の下っ端は成績如何によって次々と顔ぶれが替わるのだ。

「よろしく頼むよ、その2」
「承りました」

こうしてダイジャーに新たなる下っ端兼幹部候補生その2が誕生したのだった。

(2014/03/21)

初出:2014/04/06