斗南戦隊ホスピタレンジャー12




「そもそもホスピタレンジャーとは、どのような経緯で争うことになったのでしょうか」

そんな当たり前で基本的な質問をされ、ダイジャー幹部候補下っ端その1はあんぐりと口を開けた。
イケメン台無しである。

「ちなみにあまり出てこないホスピタレッドの実力とは、どれくらいのものなのでしょうか」
「そ、それは、知らないうちにやられていて、実力を知る機会はなかなかなくて」
「では、そのキーマンであるホスピタピンクとの関係は」
「こ、恋人同士、ですかね」
「そのほかのレンジャーとの関係は良好なんでしょうか」
「た、多分。あ、ホスピタブラックとは仲の良い友人という感じで、ホスピタブルーはレッドとライバルという感じで、グリーンは…一番厄介かもしれません」
「以前はイエローがいたという報告が」
「ああ、どうやら退職したようです」

退職という表現が正しいのかどうかわからないが、確かにイエローは現在ホスピタレンジャーをやめているので、情報としては間違っていない。
それにしても、と下っ端その1は冷や汗をかいていた。
この下っ端その2はただのイケメンではなかったようだ。
このダイジャー・モリンのアジト…もとい、研究室に入ってからというもの、なかなかにして目覚ましい活躍を遂げていた。
停滞気味だった研究室はにわかに活気づいた。
とは言うものの、かなりのイケメンであるにもかかわらず、自ら進んで研究室に入ってくる変わり者であるのは確かだ。どうやら下っ端その1に劣らずオタクっぽさを醸し出している。
分析して研究するのが趣味なのか、こうやってホスピタレンジャーについて日々研究している。
その分析が役にたつ日も近いかもしれない。
下っ端その1としてはこれは大いなる危機、であった。
下っ端その1を追われるのも近いかもしれない。
もしかしたらこいつが先に幹部になってしまうかも、という危機感だ。

「とりあえず、対峙してみればわかるだろう」

そう言って下っ端その1はその2を連れ出すことにした。
名目は何か考えねばならない。
現在唯一の幹部であるモリン様が不在なのは幸か不幸か。
モリン様はあのお面ゴールドの話をしてからというもの、何か考え込んだままアクションを起こさないのだ。
ここは一つ幹部候補生として下っ端だけで何とかするしかないだろう。
ちょうど時間はいい頃合いだ。
世間はお昼休み。
しかも中庭に出ようとしてちょうどいつも人質になる例の彼女がいる。

「ちょっと失礼」

そう言って素早く例の人質彼女に断ってから軽く縄をかける。その際にもあまり身体に触ってはいけない。セクハラで訴えるとうるさいのだ。
久々だなと思いながらホスピタレンジャーを待ち受ける。
人質彼女は面倒そうに「たーすーけーてー、ホスピタレンジャー」とやる気なさそうに声を上げた。
そう言った後で、マジマジとこちらを見た。

「ねえ、あなた、ちょっと覆面取ってみてよ」
「いえ、これは」
「何かイケメンの匂いがするのよね」
「え、いや、あの」

何を思ったのか、人質彼女は妙に目をキラキラさせながら下っ端その1に迫る。
更に隣にちょっと待ちくたびれた感で下っ端その2が控えていたが、そちらにも目をやり、「あら、そちらもなんだかイケメンの匂い」と言ってもはやホスピタレンジャーはどこへやら。

「いや、あの、そ、それよりも、ホ、ホスピタレンジャーを」

後退りながらその人質彼女から遠ざかる。

どうする、下っ端その1?!
次回へ続く。

(2014/06/29)

初出:2014/06/29