斗南戦隊ホスピタレンジャー8




前回(前作『斗南戦隊ホスピタレンジャー7』参考)、ダイジャーの下っ端たちに拉致されてしまったグリーンだったが、あっさりそこから抜け出す途中で妙な光景を見つけた。

「やめろやっ。いてもうたるで!」

そんなふうに叫ぶ青年を見つけた。
残念ながらその容姿はイケメンとは程遠いサルのような顔立ちではあったが、青年の身体は何かの実験のごとく拘束されていた。
グリーンも今すぐに飛び出して助け出したい気持ちはあったが、何せここはわけもわからない敵の本拠地(だと思われた)。
まさか斗南の一角にこんな場所があろうとは。

「おかしいな、イケメンばかりがさらわれていると聞いたのだが」

グリーンによるイケメン判定はそれなりに正しかったらしい。

「そうか、何かの実験体なんだな」

早く助けろ、グリーン、と思われるだろうが、グリーン自体もなかなかその場に飛び出せない事情があったのだ。
目の前にあるのは通風孔。
そこへ飛び出すには多大なる力で飛び出さなければならない。
とりあえずその実験そのものを見守る羽目に。

「ふはははははは、怪人カンサイヤネンに改造するのだ!」

な、何?!
いったいどんな技を持てば普通の人間が怪人になるのか興味津々だ。
何となく違うんじゃないのかとそろそろ気づき始めた者もいるだろうが、ここは斗南のとある一角であり、同じ特撮という枠に入るから心配しなくてよろしい。

「うぎゃーーーーー、やめろーーーーー」

関西弁の青年の悲鳴が響く。
それに耐え切れずグリーンは通風孔を渾身の力でもって打ち破ると、実験を開始していた者たちを倒し始めた。
当然実験されていた青年も助ける。
もっとはよ助けろやという青年の声は無視して、グリーンは戦った。
何とか青年と二人してその場を逃げ出すと、青年の腰に妙なものがついているのを発見した。
「それは?」
なにやら風車のようなものがついている。
「ははは、まさかこれで変身できるっちゅうけったいなしろもんやあらへんか」
冗談交じりに青年がつぶやき「とおっ!なんてな」と言った瞬間だった。
青年の姿はなんとお面をかぶった姿に変身した。
「…なんや安っぽいなー」
「へ、変身した…」
グリーンは自分も変身しているにもかかわらず、青年の姿に驚愕した。
「そうは言うても、わしはバイクに乗れへんで。チャリなら何とか」
「何なら今からバイクの免許を取るという手も」
「バイクか…。無免許じゃあかんか」
「それはちょっと」

おいおい、問題はそこじゃないだろうと誰も突っ込まないので、どんどんエスカレートしてゆく。

「そもそもわしは料理人やぞ」
「お面料理人…そのまんまだ」
「ほんでも怪人を料理してやるで〜というのはどうや」
「うーん、まあ、許せる範囲か」
「よし、決まりや」

某ヒーローとどんどんかけ離れていくが、そこはあえて目をつぶろう。

「では、また会う日まで」
「おう、そっちもきばりや」

こうして二人のヒーローは別れた。
新たに誕生した微妙なヒーローとまさかその後すぐに共闘することになろうとは知る由もないグリーンだった。

(2012/06/18)

2012/09/028初出