Kisses
初めてのキスは、意地悪で突然だった。
それでも大好きな人で、嫌いになれなかった。
好きなのやめると言ったのに、忘れてみろよと、少しだけ乱暴に押し付けられた唇の感触が忘れられなかった。
2回目のキスは、夢の中。
急に優しくなったあの人にドキドキした。
ずっと夢を見ていたかったけど、すぐに目を覚ませばもっといいことがあったかもしれないと、優しく触れた口づけの甘さに浸っていた。
3回目のキスは、雨の中だった。
自分の心の傷に雨がしみこんで、ゆっくりと溶けていくようだった。
ふわふわと、それこそ夢だと思ったその感触は、きっとそれから何百回、何千回キスしても忘れられないと思った。
あなたはもう数えなくてもいいと言ったけど、本当はしばらく数えていたの。
あなたとキスしたことがずっと信じられなくて、おまじないのように手帳に印をつけてたの。
あなたの腕に抱かれて、数え切れないほどのキスをもらって、やっとあたしは数えるのをやめた。
それから何度もキスをして、あたしは少し欲張りになった。
ねえ、もっと、もっと、キスをしよう。
いつまでも、ずっと、キスをしよう。
あなたのスキをもっとあたしにうつして。
* * *
初めてのキスは、覚えていない。
いとこからされたのがそうだと言えば、そうなのかもしれないが、そんなことはどうでもいいと思っていた。
あいつは初めてだとか、2回目だとか、ずっとこだわっていた。
自分の意思で初めて口づけたとき、自分のイラついた心を静めるためだった。
好きだとか、嫌いだとか、そんなことさえどうでもよかった。
意地悪をするならもっと他の方法があったはずなのに。
眠っていたあいつにキスしたときは、少しだけ秘密めいて、そしてやっぱりイラついていたかもしれない。
好きなのか、そうじゃないのか、まるでキスをすれば答えが出るかのように。
3回目のキスは、初めて自分の気持ちを認めた瞬間だった。
雨が降っていたことさえ忘れた。
頬に流れるのは、雨なのか涙なのか。
あいつは信じられないというふうに俺を見ていた。
何回キスしたら俺の気持ちは伝わる?
何回抱きしめたら信じられる?
いつも言葉にしない代わりに、言葉にしない想いはキスにして。
あいつの驚いた顔、泣いた顔、笑った顔。
全てキス一つで閉じ込めてしまいたい。
そんなことで安心できるなら、数え切れないキスをしよう。
俺が欲張りなのか、それともあいつか。
スキだとちゃんと伝わるならば、そんなことはどっちでもいい。
(2005.11.26)