誕生日おめでとう2
凄く元気な子よね。
お腹をけるその力強さにあたしは何度そう言ったことか。
そりゃおまえの子だからな…と笑われた。
「もう少しですよ、波が来たら踏ん張って!」
もうすぐ、あなたに会える。
「はい、いきんで!目は閉じない、下を見て」
苦しくて、痛くて、ちょっと泣き言も出てしまった。
「はい、頭出ました。いきむの止めて、軽く息吐いて…ハッハッハッハッ」
もう、生まれるの?本当に?
「右旋回…×××…」
助産婦さんの声が遠くに聞こえる。
そして…。
少しだけぼうっとしていたあたしは、
突然の泣き声にびっくりした。
「出ました、お願いします!
相原さん、生まれましたよ、女の子」
まだへその緒の付いたまま、そう言って見せられた赤ちゃん。
ふふ、まだしわくちゃ。
でも、かわいい。
…あたしの子。ううん、あたしとしげさんの子だ。
あたしはほっと息を吐いた。
しばらくして、目の潤んだまましげさんはあたしに言ってくれた。
「ありがとう。よくがんばったなぁ」
これからはあたしたち、お父さんとお母さんだね。
あたしに似てかわいい女の子でしょ。
新米お父さんは頭をかいた。
「そ、そうだったかな」
ねぇ、名前はやっぱり琴子ね。
琴が優しく鳴り響くように。
優しくてかわいい女の子に。
ううん、本当は健康だったらいいの。
元気で根性のある子ね。
え?あたしみたいに?
そうね、そして素敵な人に出会うの。
でも、本当の、本当は、ただ幸せに。
みんなに愛されて、ずっと幸せに。
いつまでも幸せに育っていきますように。
ただ、それだけが願い。
生まれてきてくれて、本当にありがとう。
誕生日おめでとう2−Fin−(2008/09/11)