タ 絶え間なく降る おまけ
「おめでとー、琴子」
「本当にやったねー!
やったねー!長かったねー!」
友の幸福に三人は喜び合った。
長い片想いの末の幸せの大逆転だ。
喜んで祝福するのが友と言うものだろう。
まだ若干の憂いはあるものの、そんなのこの長く紆余曲折を経た道のりに比べれば、どれだけ容易いことか。
理美とじんこは先に帰るという琴子と別れて大学構内を歩き出した。
琴子の大逆転の結末は、既に大学内の掲示板に貼られている。
中には今までも似たようなビラが貼られていたことから、まさか本当に琴子があの入江直樹と将来を誓い合ったなどと思っている者は少ない。
真実を知ったら、それこそ本当に大騒動だろう。
「ねえ、じんこ、さっき琴子の首、見た?」
「ああ、あれ?」
「琴子ってば、気がついていないわよね」
「え、まさか」
「虫刺され、じゃないわよね」
「……あたし、てっきり琴子が言わないからそうかなと思ってたけど」
「…じゃあ、あたしの勘違い?」
「それにしては…」
「やっぱり、入江くんが?」
「ええっ、あの二人、もうそこまで?」
「だって昨日の今日よ」
「正確にはこの間の雨の日ってことだけど」
「じんこ、あたし確かめてくるっ」
「あ、ちょっと待って、理美」
駆け出した理美の後を追ってじんこが続く。
まさかあの入江くんが?と二人の疑問は直接琴子にぶつけられることになった。
琴子が果たして正確に答えられたかどうかはさておき、掲示板のビラが真実だと広まるのはそう遠い話でもなかった。
(2012/06/15)