イタkiss梅雨祭り2012



ス スコールの後に



随分待ったと思う、と直樹は風呂上りの琴子を見ていた。
本来ならここで直樹が交代して風呂に行く番だった。
残念なことに家には他の家族がいて、家に帰りついた途端に琴子は風呂場に行かされ、直樹は寝室へ着替えを取りに行かされた。
一緒に風呂場へ放り込まれたら、とてもそのまま見過ごすことはできなかっただろうが、琴子とは家族の手前、一緒に入ることすらないので、遠慮しながらも琴子が先に風呂に入っていった。
どちらかと言うと、邪な考えが湧いたせいか直樹に寒気はなく、この熱さをどうにかしてもらおうと罠を張るように寝室で待ち構えていたのだった。

「入江くん、先にごめんね。寒くなっちゃうから早く入って」

そう言って寝室に入ってきた琴子の髪はまだぬれていた。
さすがに三つ編みは解かれていたが、先ほどの肌に流れる雫を思い出し、直樹は鎮まりかけていた下半身の熱を自覚した。

ぬれた服は先ほど脱いでベッドの横に放り出していた。
代わりのものを出すべきかとクローゼットを探っているときに琴子が戻ってきたのだ。

「あの、えーと、寒くない?」

着替え中とは言え、上半身裸で直樹が立っていたことに戸惑って、琴子はこちらを見ようとせずに化粧台の前に行こうとしていた。

「ああ、少し寒いな」

悪びれずにそう言うと、琴子は振り向いて「え、ごめん、あたし先に入っちゃって。急いでお風呂に行ってきて」と直樹の背を押した。
押した手をつかむと、びっくりした様子で直樹の顔を見た。

「ベッドで温まろうかと」
「風邪ひいちゃうよ?」
「おまえが温めてくれるだろ」
「…え、どうやって…って、ええっ」

途中で意味を悟ったのか、肩にかけたバスタオルを落として後ずさった。

「レポート、手伝ってほしいんだろ」
そう言って笑いかけると「い、意地悪」と睨み返す。
後は意見も聞かずにベッドに押し倒した。

「髪…ベッドぬれちゃう」
「…今更だろ」
「…ん…だって」

羞恥を承知でTシャツも短パンも剥ぎ取ると、Tシャツの下は下着もなかった。

「おまえな、下着もつけないで…」
「だって、ぬれちゃったんだもの、すぐにお風呂場だったから着替えもこれしかなかったし」
「…ま、手間が省けていいけど」

そう言って小ぶりの胸を揉みしだく。

「や、ちょっと、なんでそんなにやる気なの?レポートのせい?そ、それならあたし自分でやるからっ」

琴子にしてみればもっともな疑問だ。
これからレポートをしなければいけないというのに、ここで体力を奪われてしまったらレポートも心もとない。

「そうだな…おまえの髪がぬれてたから」
「意味わかんないっ。
あ…んんっ、もう」

程よく色づいてきた胸の頂を弄ったり摘んだり、舌で転がしながら、直樹は笑う。
多分琴子から見れば随分と意地悪な顔をしているんだろうと思うが、あまりにも直樹の思うとおりの行動をとるので、くくっと笑う。
髪から垂れてきた雫が、つつっと肌を滑り落ちる。
髪が長いので、それは胸を通り越して緩やかな窪みを作る臍へと向かう。
それを舌で舐め取り、そのまま下半身に顔を埋める。

「やあん」

甘い声が響き、なだらかな下腹が波打つ。
風呂上りなので火照り気味の体からは湯気が立ちそうだった。
琴子自身から湧き出てくるもので下着はぴったりと張り付き、色気のない下着でも卑猥な感じすらする。
薄いピンクの下着を取り去りながら更に舌を下げていくと、拒むように足に力が入る。
そんなふうに足を閉じても、正面から見える範囲だけを丁寧に弄るだけで結局足が緩んでしまうことを未だ学習しない。
そのうち耐え切れなくなって真っ赤な顔をしながら足を擦り合わせる羽目になるというのに、と琴子の少し歪んだ顔を眺めた。
体を起こして琴子の体を抱きしめるとゆっくりと唇を吸う。

「いり…えくん」

うっとりとしているが、丁寧に弄る狭間は湧き出てきたもので滑ってきていた。うっかりすると指は狭間にするりと入り込んでいく。
少しだけ焦らしてやろうとあえて中に入れていないというのに、あまりの滑りにずるりと弱い部分を刺激してしまうのか、そのたびに「あ、ああっ」と小さく声を上げた。
そのうちに息も上がり、じれったそうに足をそわそわとさせている。

「結局…こうなるんだ」

楽しそうに直樹がつぶやいたが、琴子には既に聞こえていないようだ。

「入江くん、寒いんでしょ、お布団、かぶって」
「…相変わらず、バカ」
「な…!」

抗議しようと口を開けたままの琴子を見下ろしながら、直樹は愛おし気に笑う。

「おまえの中が一番温かいよ」

スコールの後、また日が照りだした空に虹がかかっていたが、夜までベッドで過ごした二人には知る由もなかった。

(2012/07/23)