ラブラブエロで10題



1.キスの嵐


それはいつも出張から帰ってきたとき。
当直で帰って来れなかったとき。

「入江くん、お帰りな…んん」

部屋で着替える入江くんに近づくと、全部を言わないうちに交わされる口づけ。
脱ぎかけの背広。
はだけかけたシャツ。
ネクタイを緩めながら、抱きしめられるよりも先に触れる唇。
言葉よりも先に語る唇。
しばらく触れなかった肌に触れながら、唇を受け入れる。

まぶたに、頬に、髪に、耳に。

降ってくるのは、キス・キス・キス。

いつもトラブルに巻き込むあたしが、唯一逃げられない暴風域。
入江くんのキスにさらされて、今日も嵐の中。

降らされるキスに、あたしは抵抗できない。
ううん、抵抗する気もない。
だって、入江くんからもたされるのは、さながらキスの嵐。

もう、逃げられない。


1.キスの嵐(2006/12/31)−Fin−