1.キスの嵐
それはいつも出張から帰ってきたとき。
当直で帰って来れなかったとき。
「入江くん、お帰りな…んん」
部屋で着替える入江くんに近づくと、全部を言わないうちに交わされる口づけ。
脱ぎかけの背広。
はだけかけたシャツ。
ネクタイを緩めながら、抱きしめられるよりも先に触れる唇。
言葉よりも先に語る唇。
しばらく触れなかった肌に触れながら、唇を受け入れる。
まぶたに、頬に、髪に、耳に。
降ってくるのは、キス・キス・キス。
いつもトラブルに巻き込むあたしが、唯一逃げられない暴風域。
入江くんのキスにさらされて、今日も嵐の中。
降らされるキスに、あたしは抵抗できない。
ううん、抵抗する気もない。
だって、入江くんからもたされるのは、さながらキスの嵐。
もう、逃げられない。
1.キスの嵐(2006/12/31)−Fin−