Onesided Love Story




高校時代の友人たちに。
今なお友人でいてくれるその広い心根に感謝をこめて。




序章 〜Fall in love〜




…ばかばかしくて人にも言えない。

それは高校に入学してすぐ、親睦のためと称して球技大会なるものがあった。
なんで顔も覚えていないうちから玉を追いかけねばらならないのか、しかも受験でなまった身体を酷使せねばならないのかさっぱりわからなかったけど。
その練習中、あたしはぼんやりとクラスの男子がたわむれる様子を見ていた。
女子はバレーボール、男子はソフトボールのはずだったのに、なぜか体育館へなだれ込んできた男子にコートを奪われて、あたしたちは体育館の壁際に座って見学する羽目になったのだった。
やたらとはしゃぐ男子の中で、あたしは多分最初からその人を見ていた。
…と言うのも、中学で同じクラブだったアキちゃんの片思いの相手だったからだ。
アキちゃんに聞かされていたその人は、決して目を見張るほど格好良くもないし、背も普通。
成績も普通、運動神経だけは結構いいとのこと。
それなら見てやろうという気持ちもあったかもしれない。
残念ながらアキちゃんは違う高校に行ってしまって、入学後に同じクラスにその人がいるのを知ったあたしは、アキちゃんに早速報告することになった。
しかも、出席名簿も偶然近くて、席も前後。
いやでも目に入る。
見れば見るほどおかしなやつだった。
すましたまじめな顔で何やらとぼけたことを言うと思ったら、それは素でぼけているんだとわかったときの驚き。
そう言えば聞いたことあったよ、アキちゃんに。
アキちゃんが好きになったときのエピソード。
星座の話をしていたのに、突然「俺はゴザ」と言ったらしい。
寒いだろ、普通。寒いよ、普通は。
なのに、それで惚れたと言うから、アキちゃんも相当なものかもしれない。
とにかく、そんな目で見ていたので、ボールが渡ったときのそのギャップに更に驚いた。
ああ、運動神経よかったんだっけ。
淡々とボールに向かう割に、きっちり返すボールさばき。
おまけにサーブになったときに、いきなりジャンピングサーブを決めてくれた。
…思えば、あたしはこのとき、恋に、落ちた。

To be continued.