あかずきんちゃん…だったら




ある日お父さん・相原父が言いました。

「森の向こうに住んでいる奥さんが、風邪で寝込んでいるらしい。おまえちょっと行って様子を見てきてくれないか」

あかずきん・琴子は素直に

「はーい」

と返事をして、お見舞いに出かけることにしました。

「おお、そうだ。あっちの森の奥には、時々おおかみが出るって噂だ。まあ、見たやつはあまりいねぇから、大丈夫だとは思うが。寄り道すんじゃないぞ」

おおかみが出るらしいとわかっていて、子どもをお使いに出すのもどうかと思うが、まあこれはただのお話なので先へ進む。


さて噂どおりおおかみ・金之助が森に住んでいました。
おおかみ・金之助は、あかずきん・琴子を見て一目ぼれ。
声をかけようとしましたが、あかずきん・琴子に逃げられてしまいました。
仕方がないので、森の奥へと先回り。
あかずきん・琴子が見舞う予定の奥さんの家へ。
家の中ではあかずきん・琴子を待つ奥さん・入江ママ。
ぜひ何とか息子との既成事実を作ってしまおうと、あの手この手を考えておりました。
そこへおおかみ・金之助が…!

「ええい、琴子を待たせてもらうで〜」

傍若無人に家の中に居座ろうとしています。
いい作戦を思いついた奥さん・入江ママは、何やらおおかみ・金之助に入れ知恵。

「よっしゃわかった!」

ご機嫌で奥さん・入江ママの格好をしてベッドで待ちます。
いざとなったらあかずきん・琴子を襲ってしまえばいいとまで思っています。
奥さん・入江ママは、慌てて自分の息子を呼びに出かけました。


さて、森の奥まで来たあかずきん・琴子。
おおかみにも会わず、スキップしながらもうすぐ到着です。
そこへ狩人・直樹登場。

「おおかみが出るらしいが、…まあ、おまえなら大丈夫そうだな」

狩人・直樹は一応忠告して立ち去ろうとします。
ところがあかずきん・琴子は、狩人・直樹に一目ぼれ。
お見舞いも忘れてふらふらと狩人・直樹の後を付いていきます。
息子を呼びに行こうと思った奥さん・入江ママは、すでにあかずきん・琴子と一緒にいる息子の狩人・直樹に満足げです。
木の陰からあきこ姉ちゃん(注:日本史上木の陰から見守ることにかけてはこの人を置いて他にはないという人物→参考:『巨人の星』)のごとく見守っています。
説明するくらいならそんな名前出すな?
いや、まあ、そんな意見は無視して先へ進む。
そしてあかずきん・琴子、お見舞いはどうしたんだ?
いやそれよりも、奥さん・入江ママは本当に風邪だったのか?
奥さん・入江ママの作戦とは?
などと数多の疑問を振りまきながら、忘れ去られた誰かが…。


 * * *


「琴子〜〜〜〜!!」

悲しげに響く自分の寝言に驚いて、がばっと起き上がった。

「琴子、どこ行ったんや〜〜〜」

目が覚めてもなお、待っても待っても現れなかった琴子を思って一人寂しく泣く金之助でありました。


あかずきんちゃん…だったら−Fin−(2006/08/10)