坊ちゃまとあたし




21


斗南高校はそろそろ文化祭の時期だった。
一年生であるあたしたちは、それほど大がかりなことはできない。
二年生が中心で、しかもA組はほとんど参加しない。
F組はお祭り大好き連中だから、そこそこはりきっていた。
ところが、文化祭とは名ばかりで、各組展示物のみ。
どうしてそんなにつまらないのかと言えば、バカ騒ぎは体育祭まで。それ以降は受験に専念、ということらしい。
当然のことながらF組はうっぷんが溜まり、展示物決めも進まない。
なんといっても展示物が得意なのはA組だからだ。
「もうこの際F組就職先実績でも表にしたら?」
「それは二のFがやるって」
「…やるんだ」
失笑が漏れる。
「A組の大学進学実績なんて、嫌味かってーの」
「そんなもの誰が見たいってのよ」
クラスの中は全く決まらない展示に、次第に険悪になってきて投げやりになってくる。

「こりゃダメだ」
理美が呆れたように言った。
「だいたいこんな頭を使う展示なんてF組に向いていないのよ〜〜〜〜」
じんこが叫んだ。

あたしはどうしたらいいのかため息をつきながら眺めていたのだけど、いきなり金ちゃんがあたしの名前を出した。
「ここはわしと琴子の愛のメモリーをやな」
「何言ってんの、金ちゃん!」
阻止するべく大声を出したら、誰かが言った。
「そうよ、琴子の家のあの頭のいい執事さんにちょこっとアドバイスをいただいて…」
「む、無理よっ」
「だって、そうでもないとF組全員の頭使ってもA組一人分にかなうかどうか」
「そんなことないわよ」
「そりゃ琴子は一学期のテストでそこそこいい点も取って、唯一F組でワーストから抜け出たからいいでしょうけど」
「そ、それは…」
「もしかしたら来年はE組かもしれないわよね。そうしたらF組での思い出は今回限りよ」
「そ、そんなことは多分ないと思う」
皆から口々に言われる言葉にあたしは冷や汗をかいた。
いつも下の方をうろうろしていたあたしの成績は、とりあえずF組の中ではトップクラスだった。とは言っても、あくまでF組の中で、だけど。
しかもその成績を押し上げてくれた功労は、執事の渡辺さん。実力とは言い難いのだ。
「じゃ、明日、琴子からの報告を待ってまた決めましょう」
「そ、そんな」
「じゃあ、かいさ〜ん」

ぞろぞろとF組の皆が教室から出ていく。
他のクラスはまだ真剣に討議をしている。
どうしてこうなのかしら、F組って。
…ああ、だからF組なんだっけ。
あたしは肩を落としながら帰る支度をした。
ああ、どうやって渡辺さんに言ったらいいのだろう。
いやそもそもそんなことまで頼っていいんだろうか。
それに坊ちゃまに何言われるか。

「琴子、大変なことになっちゃったわね」
「助けてくれたっていいじゃない」
「だって、あたしも何にもアイデア浮かばないんだもん」
理美の言葉にあたしは「ああ」とため息をついた。
「まあ、ダメでもともと。聞いてみてダメだったらそう正直に言うしかないわよ」
「あたしのお屋敷での立場はどうしてくれるのよ」
「えー、大丈夫でしょ、聞くだけなら」
「そんな無責任な」
結局押し切られたあたしは、お屋敷への道のりがより一層重いものになったのだった。




22


入江家のお屋敷に帰るのに、これほど足が重くなったことはあるだろうかと自分に問いかけながらあたしは門を入った。
「ただいま帰りました」
それでも心配かけないように声だけはいつものように張り上げて自分の部屋に行こうとすると、途中で坊ちゃまが現れた。
う、早い、と内心思いながら「荷物置いて着替えてきますね」と声をかけてその場を去ろうとした。
「おい、学校で何かあったのか」
す、鋭い…。
でもあの話は坊ちゃまに知られるとろくなことにはならないと思い、とりあえずそれについては口にせず「また今度から文化祭の準備が始まるから坊ちゃまに悪いなあって」と二番目の理由を口にした。
坊ちゃまは「文化祭?」と首を傾げて考えている。
「おい、渡辺、文化祭ってあの馬鹿騒ぎみたいなやつか」
そう言ったので、あたしはぎょっとして振り向いた。
そこには「お帰りなさいませ、琴子さん」とにこやかに渡辺さんが立っていた。
いつものことと言えばそうなんだけど、心にやましいことのあるあたしは、思わず鞄を抱きしめてそのまま階段を駆け上がってしまった。
うわー、やばい、思わずとはいえ、思いっきり怪しい行動を。
「おい、琴子」
坊ちゃまが階段の下でそう呼んだようにも聞こえたけど、あたしの心はそれどころではなかったので一目散に部屋に入った。
部屋に入って息を整え、坊ちゃまが乱入しないうちに着替えをと思っていると、案の定坊ちゃまが部屋のドアをノックした。
少し前までいきなり開け放していたことを考えれば、これはようやくあたしにも敬意を払ってくれていると考えてもいいのかもしれない。
実際渡辺さんにレディの部屋をいきなりノックもなしに開けるものではありませんとこんこんと注意されているのをあたしは涙目で見守ったのだ。
渡辺さんが止める間もなく本当に着替えている最中に開け放たれて、屋敷中に響き渡る大声を上げたのは坊ちゃまなら忘れられないだろう。
幸い渡辺さんに見られることなく済んだ(その代わり坊ちゃまにはばっちり見られた)。
ノックされたドアに向かってあたしは声を張り上げた。
「ちょ、ちょっと待って。今着替え中です」
実際にはこれから着替えるところだったけど、気持ちの整理をつけるためにも少しゆっくりと着替えようとしていると、どんどんどんとさらにドアをノックされた。
え、えーと、もう少し待ってほしいかな。
「は、はぁい、もう少し待って」
仕方がないので急いで着替えると、あたしは部屋のドアを開けた。
「いったいなんでしょ…」
「琴子、どうしたんだ」
「へ?どうしたって…」
既に怒った顔で坊ちゃまは仁王立ちしている。
あたし、まだ何もしてないはずだけど。
「琴子さんの様子がいつもと違うので、直樹さまは何かあったんじゃないかと」
渡辺さんが控えめにそう言った。
「何かあったのかと言われれば、何もないです」
あたしは渡辺さんの目を見られなくて横を向いた。
「…渡辺、琴子に甘いもの」
坊ちゃまがそう言うと、渡辺さんは「かしこまりました」と言って厨房へ行った。
体よく追っ払ったのはあたしでもわかる。だって坊ちゃまがあたしをそんなに甘やかすことするわけないもの。
坊ちゃまは俺を中に入れろと言わんばかりに部屋へと顎を向けた。
お行儀悪いですよ、坊ちゃま。
部屋の中に入った坊ちゃまは、腕組をしたままあたしを見上げた。
五歳児なのに、何その迫力。

「さあ、聞かせてもらおうか。渡辺と何かあったのか」
坊ちゃまの考えていることはちょっと違う気もするけど、渡辺さんが関係するのは本当で。
しかも何も言っていないのに何で渡辺さんと何かあったなんて思うんだろう。
「…言えないことなのか」
あたしはがっくりと膝をついて、渡辺さんが戻ってくる前に坊ちゃまに白状する羽目になったのだった。



23


まさか五歳児の坊ちゃまに詰問されるなどという情けない構図になるなんて、あたしは思ってもいなかった。
ううん、本当はばれたらこうなるだろうなという予想もちらりと頭をよぎったのだけど、見ない振りしたかっただけなのよね。
渡辺さんが厨房から戻ってくるまでの間にあたしは早口で文化祭に渡辺さんの知恵を拝借したいというクラスの思惑を洗いざらいしゃべることになった。
それを聞いた坊ちゃまは、ふんとただ一言。
そ、それだけですか。
何となくその反応自体が怖くて、あたしは座り込んで正座したまま目の前で腕組をして立っている坊ちゃまを見た。
こーんなに小さいのに、何であたしはこんなに下手に出て、しかもお伺いを立てているんだろう。一応教育係兼遊び係だったはずなのに。
十歳の年の差がそのまま上下関係にならないのは嫌というほどわかったのだけど、頭の出来自体も全くかなわないとわかってしまったのは、あたしにとっての一番の不幸だった。

何か甘いものという注文を受けて、渡辺さんが持ってきたのはプリンだった。
渡辺さんが渡す前に坊ちゃまはもちろん先制した。
「渡辺。琴子のおバカクラスが文化祭で簡単に展示できるものはないかって」
それを聞いた渡辺さんは、一瞬目を瞬いてから微笑んだ。
ああ、そうよ、この優しさが欲しいのよ〜。
あたしはすがる思いで渡辺さんを見た。
「そういうことですか。坊ちゃまがアドバイスなさってあげたらいかがでしょう」
「そう言っておまえも面倒なんだろ」
「いえ。そのほうがきっと琴子さんもお喜びになるんじゃないかと思いますよ」
渡辺さんがあたしを見た。
あたしはすかさずうんうんとうなずいた。
「それなら明日の放課後、おれをあのおバカクラスに連れていけ」
「ぼ、坊ちゃまが?」
「どうせ来年にはそこの小学部に入学するから見学がてらだ。それに今更おれ一人琴子のクラスに紛れ込んだってどうってことないだろ」
「そ、そうですね」
そう言いながら、どうってことないってことはないと思うけど、と心の中で返答する。
下手をするとかわいい〜とか言ってもみくちゃにされる恐れも…。
あ、でもこの威厳ならそんなことされる前に遠巻きにされるかも。
坊ちゃまってすさまじく坊ちゃまオーラが出てるもの。
ま、なるようになるか。
それにアイデアを出してくれるなら万々歳だよね。
あたしはそう楽観することにしたのだった。

でも、そうか。
来年は坊ちゃまも小学生なんだ。
そうすると、少しは友だちもできたりなんかして、坊ちゃまの世界も広がっていくのね。
そのうちあたしなんてお払い箱になって…。
「は?琴子?ただの居候だ」
なーんてことになって、あたしは屋敷の片隅でひっそり過ごして、忘れられて、坊ちゃまが気づいたときには「ああ、いたな、昔、そんなやつ」なんてちょっとした幼少時の思い出に…。

「…琴子!」
「は、はい」
「どこまで妄想した」
「え?ひっそりとお屋敷を出るところまで」
「…バカが」
「えーと、す、すみません」
よくわからないままとりあえず謝ると、坊ちゃまは「食べろ」と言って部屋を出ていった。
目の前には渡辺さんが持ってきてくれたプリン。
「どうぞ、琴子さん」
「ありがとうございます」
受け取ると、渡辺さんは笑って言った。
「坊ちゃまの中では今のところ、琴子さんをお屋敷から出すという選択肢はないようですよ」
「は、はあ」
「どうか、これからも見守ってあげてくださいね」
そう言って渡辺さんも部屋を出ていった。
あたしの目の前にはプリン。
坊ちゃまが食べろと言ってくれたプリンは、甘くて、カラメルがほんの少し苦味があった。
「ふふ、坊ちゃまみたい」
あたしはまだ見ぬ未来も楽しみに、プリンをほおばったのだった。



24


放課後が近づくにつれてあたしはドキドキしていた。
朝から散々素晴らしいアイデアについて質問をされるも、何とかごまかして乗り切っている。
多分半分くらいは皆諦めモードのような気がするけど、半分くらいはあたしから素晴らしい発表が放課後にあると思っている。
この能天気さ具合が坊ちゃま曰くおバカクラスってことなんだろうけど、あまりにも本当のこと過ぎて反論するのも忘れてたわ。
そしていよいよ授業も終わって部活が始まるまでのひと時、あたしは黒板の前に引きずり出されるようにして立たされた。
「えーと、その、提案はあたしからじゃなくて、あたしが同居させてもらっているところの…」
あたしがそこまで言った時、後ろの教室の戸ががらりと開いた。
そこには担任の先生に連れられた渡辺さんとそこに隠れるようにして立っている坊ちゃまの姿があった。
もちろん何人かは振り向いて注目。
それからざわざわとする教室。
担任に引き続いて坊ちゃまと渡辺さんがお辞儀をしながら入ってきて、後ろに立っている。
ここで坊ちゃまと呼んでいいのかどうか迷うところだ。
でもあたしの困った顔を見た後、坊ちゃまは渡辺さんに耳打ちすると、空いていたあたしの後ろの席に陣取った。渡辺さんはあたしを手招いて、そっと言ったのだった。
黒板前に戻ると、意を決して口を開いた。
「あたしからの提案は、F組生徒が立ち寄る斗南高校周辺のおいしい店やかわいい店スポットをパネルにして展示したいと思います」
最初はぽかんとしていたクラスの皆は、しばらくしてからようやく反応した。
坊ちゃまの口が「鈍い」と言っている。…うん、そうだよね、あたしもそう思うよ。

「えー、それって認められるのかしら」
「でもそれいい。いつも行ってる店とかお得な店とか、どうせF組なんだから、楽しい展示の方がいいし」
「お店の人にも展示許可もらったり、うまくいけばクーポン券とか、展示見たって言えば割引してもらうように交渉するとか」
「ああ、それいい。その方がお得な感じがするし、これからも行きやすいし」

一度提案が出れば、あれこれ言わなくても盛り上がるのがF組のいいところ。
あたしはそっと自分の席の方に戻る。
それにしても、坊ちゃまからそんな柔軟なアイデアが出るなんて驚き。
坊ちゃまは斜めに構えてクラスの中を見ていたけど、あたしと目が合うとどうだと言わんばかりだった。
「さすが坊ちゃまです。よく思いつきましたね」
「ここへ来る途中、斗南の連中は学校帰りにあちこち寄っているのが見えたからな。どうせたいした調べ物もできないんなら、自分たちが得意なことの方がいいだろ」
「そうですね。いいアイデアだと思います」
あたしは皆があれこれ話し合うのを見て、ようやくほっとした。
デジカメがどうとか、交渉係がどうだとか、すでに具体的な話に移っている。
「坊ちゃま、帰りましょうか」
「おまえはいいのか」
「いいんです。今日は坊ちゃまにあたしのおすすめスポットの案内します」
「…遠慮する」
「えー、何でですか。アイス、お嫌いですか」
「甘いのはいらない」
「甘くないですよ。ちょっと変り種があるんです。最近流行りだした醤油アイスとか」
「いらないな」
「そう言わずに」
あたしはそっと教室を出ていきながら、坊ちゃまにさらに勧める。
「あ、今度通販で手羽先アイスとかどうですか」
「なんでわざわざアイスにするんだ、そんなもの」
「名古屋名物ですよ」
「…知ってるが、だからと言っていらない」
もう、子どもらしくないんだからと言ったけど、坊ちゃまはおとなしくあたしの後をついてくる。
珍しく渡辺さんは車を学校まで乗り付けなかったのだとか。
来年からの学校通学のために周辺を知るのも大事だと、お屋敷から歩いてきたらしい。
もちろん道にはボディガードもついていた。
大事な坊ちゃまだもんね、当たり前だよね。
あたしのお勧めするアイス屋さんは、本当に通学路から一本道を変えたところにあって、斗南生は知っているけど、知る人ぞ知るアイス屋さんなのだ。
あたしは散々迷った挙句パンプキンアイスを選び、坊ちゃまは渡辺さんとシェアするとかで今お勧めの醤油アイスに手を出していた。
スプーンで一口食べて何とも言えない顔をした。
つまり、これはおいしいのか?という顔だ。
みたらし団子みたいでおいしいと思うんだけど。
食べたことのあるあたしはそう言うと、じゃあこれ食べる?とパンプキンアイスを差し出した。
坊ちゃまたちが持っているカップと違ってコーンに乗っているけど、まだ食べ始めだからこの辺なら大丈夫と自信をもって言ったのに、坊ちゃまは「食べられるわけないだろ」と早足でお屋敷への道を歩き出してしまった。
「おいしいのに〜」
あたしは坊ちゃまの後ろを追いかけながら、秋の空の下、こうして坊ちゃまとアイスを歩き食べできた幸せに笑うしかなかった。



25

斗南で初めての文化祭はそれなりに成功した。
一位は取れなかったけど、総合二位だったから、これは結構快挙かもしれない。
何よりもクラスの皆ががんばってあちこちのお店に掛け合って取材を許可してもらったり、パネルにもおいしそうな一押しのものを写真で展示したり、こういうのはF組の得意なところよね。
男子と女子では立ち寄る店も違って、それは新鮮で面白かったのだ。
何と言っても食べ盛り無駄なエネルギーでいっぱいのF組だしね。お得で盛りだくさんの店ばかり並んで女子としては少しため息。
でもそれは先生や他の生徒にも好評だった。
もちろんお店の協力もあったから、またお礼参りと称してそれぞれお店に繰り出したとか。なんだかお礼参りって危ないイメージなんだけど。
あたしは提案しただけだけど、それでも成功してよかったと胸をなでおろした。
理美とじんこはその有能な坊ちゃまと執事に興味津々だったけど、それ以降学校に来ることもなくてがっかりしていたようだった。
金ちゃんは意外におとなしくて、どうしちゃったのかしらね。
「琴子をあっと言わせてやると言ってたけど、あれから音沙汰がなくて」
理美が首を傾げた。
「どうしたんだろうね」
そう言い合っていたあたしたちが真実を知ったのは、文化祭が終わった後だった。
よれよれの金ちゃんが登校してきて、どうやら文化祭前にお店探しで食べすぎて、お腹を壊していたんだって。
しかも金ちゃん一人暮らしだから、その後の食費に困ってうだうだしてるうちにすっかりやつれていた。
「やだ金ちゃん、文化祭に来ればいろいろクーポン券とかあってお得だったのに」
じんこがそう言うと、金ちゃんは滝のように涙を流した。

それよりもあたしはすでに坊ちゃまの誕生日について考えていた。
坊ちゃまが誕生日を嫌がっているのはどうしてだろう。
嫌な思い出でもあるとか?
家族がいなくてさみしいからお祝いなんてしない、とか?
自分の考えだけではどうしても思いつかないので、結局渡辺さんに聞くことにした。

渡辺さんは少しだけうーんと考えた後、「坊ちゃまの同意なしに理由をお話しすることはできません」とおっしゃった。
もちろんあたしもそんなつもりはなくて、少し考えた後、それを坊ちゃまに尋ねてもいいかどうかを聞くと、多分本当の理由は話してくれないかもしれないと。
そこまでの何かがあるのだろう、坊ちゃまには。
それでも、あたしが坊ちゃまの誕生日をお祝いするのは喜ぶだろうということだった。
だから、あたしは坊ちゃまのお誕生日をただお祝いすることにして、厨房とも相談したり、他のお手伝いさんとも飾りつけを手伝ったりした。
もちろん坊ちゃまにはきっとばればれなんだろうけど、止めたりはなかったので、あたしはせっせとお祝いパーティを進めることにした。
イギリスにいる坊ちゃまの両親は、メッセージをくれることになっているけど、帰国は難しいようだった。
奥さまなんて、「私が行くより琴子ちゃんがいればいいと思うわ」と言うけど、やはりお母さんなんだからそんなことはないと思うんだけど。
「坊ちゃま、十二日、楽しみにしててくださいね」
そう言えば「余計なことするなよ」とは言うのだけど、ちょっと楽しみにしてくれてるのがわかってあたしはほっとしていた。
無事に済むと思った誕生パーティは、奥さまからの爆弾によってとんでもないことになったのだった。



To be continued.