ゴルゴ智子の華麗なる案件



後日談


「ちんちくりんがいったい何の役に立ったんですかね〜?」

黒い腕カバーを外しながら大蛇森が嫌味を言う。

「ただロビーで待たせるだけで支社長と専務の名刺をゲットしたんですよ」
「事前に御膳立てしたんじゃないですか?副社長が会えるように設定してたとか」
「そんなことがあったら、副社長は預言者ですよ、それこそエスパー」
「エスパー!それですよ!きっと副社長は神がこの世にもたらしたかけがえのない…」
「はい、ストップ」

んんっと咳払いをして大蛇森は身を改めた。

「そもそも奴が使っていたパソコンを壊すだけならあなたも必要ないくらいだったんですがね」
「壊すだけならまた新しいパソコンを買って違う場所で行ったらどうするつもりだったんです?中国企業なんですから本国にでも行かれたらもっと厄介だったでしょ」
「そう言うならば、肝心な奴はどう処分付けたんですか?」

智子はにっこりと笑って言った。

「それを知って、どうするんですか?」
「いえ、別に、ただの興味本位で」
「知らないほうがこの先も安全ですよ」
「…そのようですね」
「では、また」

 * * *

「それで?」

じんこが身を乗り出す。

「えー、智子はなんともないって言うんだけど、本当かなぁ。怖かったと思うんだよね、初めて行った会社で連れ込まれそうになったなんて」

頬杖をついた琴子の言葉に考えながら理美が答えた。

「そうねぇ。おいしいもの食べに行ったりとかして、どうだったのか聞き出してみれば?」
「こうやって?」
「そうそう!」

琴子はパフェを頬張りながら理美とじんこに笑いかける。
同じく広報課で頑張っている三人娘は笑いあった。

 * * *

「じゃあ、直樹が御膳立てしたわけじゃないんだね?」
「しませんよ。確かにかの国に売り出すときには必要な会社の一つかもしれませんが、伝手がなければ足元を見られるかもしれませんでしたしね」

社長はふうっとため息をついた。

「あの企業が悪いわけではなさそうなんだが、用心しておくに越したことはないだろうな」
「ピンポイントであんなに短期間で支社長と専務に会うものですかね」
「仕組まれたかもしれないと?」
「その可能性も考えて動いた方が」
「ふうむ」

 * * *

何故だ。
何故わかったんだ。
短時間で発信元までたどれるなんて、いったいあの会社にはどんなセキュリティ担当者がいるんだ。
それに、なんであそこにいたのがわかったんだ?
あの女!
上層部に本当のことを話そうとするたびにどこからか連絡が来るんだ。
挙句の果てにこの俺が会社をクビになるなんて。
本国に…いや、何故かそれも監視されていた。
何故だ、何故なんだ!
いったいどこから監視しているんだ?
そして、どうやって連絡先を知るんだ?
いや、お金を積めば密航なんて簡単だ。
そう思ってお金を動かそうとしたら、連絡が来たんだ。

『おまえはそこから逃げられない』

その計画も潰えた。
電話を変えても変えても連絡は来る。
しかし、スマホはどうしても必要だ。
パスポートも偽造しようとした。
連絡をするのに捨てスマホを用意したのに、それでも連絡は来た。
そうだ、それよりもマフィアに頼んで…。

ポケットのスマホが震える。

ピルルルル…。

『着信アリ』

(2025/11/24)

Fin.