その4:文庫版4巻
4巻は、入江くんが一人暮らしを始めることになります。
ファミレスでバイトをしているところに当然通う琴子ですが、先に松本姉がバイトを始めていたので気が気ではありません。
後をつけたら、松本姉のところへいく入江くんを見てしまい、誤解して落ち込みまくってファミレス通いもやめてしまいます。
突然琴子が来なくなったので気になる入江くん。
テニス部に出てみたり、裕樹君を呼び出して聞いてみたり、すっかり琴子なしではいられない体質になってます(笑)。
しかも理美とじん子に琴子の誤解を聞いたら、自ら誤解を解きにいきます。
自覚しているんだか、自覚していないんだか。
そしてあのバレンタインデーの雪の日、胃痛で倒れた琴子を部屋に泊める羽目になり、一つベッドで過ごします。
このときの入江くんの胸中はいかに。
それまでも琴子のためにわざわざ食事を買いに雪の中を再び出かけてくれたり、結構優しい入江くん。
実は琴子と二人きりでいるのが苦痛だったとか?
ここで何かあったらおふくろの思うつぼに…などと思っている以上、まったく気がないわけでもない、というところでしょう。
案外眠れなくて悶々としているところに琴子の寝息が聞こえてきて、しかも寝相は悪い。何だかんだといいつつ琴子は好きな男の横でも眠れてしまう。
自分だけ寝られないのがきっとバカバカしくなったことでしょうね。
しかし、毎度毎度大学にまで行って、掲示板に勝手に自分の息子のことを書いて貼りまくる入江ママって、自分の親だったらと思うとちょっとご遠慮したいところですが、入江くんの親としてはナイスと言うほかはありません。
まさにこの入江ママの後押しがなければ恋の成就はなかったかもですよね。
さて、琴子は入江くんと同じくファミレスでバイトができるようになります。
実は結構好きなんですよね、琴子のバイト風景。
必死になってフォローする入江くんが面白いです。
レジでお客さんに手伝ってもらったり、積み上げた食器を運ぶ後ろから入江くんが心配そうに付いてきてしまったり。
そして、裕樹君の入院で、ノンちゃんと出会い、入江くんが医者になるきっかけとなります。
すごくさらっと流れていくので、まさか後にそれが入江くんにとって大事な分岐点になるなんて思いませんでした。
会社経営じゃ物足りなかったんでしょうね。
そういえば、琴子が年下の武人君にアタックされていても、入江くんはまったく気にしていません。
琴子があてつけにデートしているのが丸わかりですから、須藤先輩のときのような心配はないようです。
おまけに琴子の好きなのは俺、なんて思いっきり自信満々ですしね。
で、ここでちょっと須藤先輩について一言。
入江くんはいろいろと須藤先輩に誘われて面倒と思っているようではありますが、他の人に比べると結構好きなのでしょうね。
あのバカに素直なところとか、琴子に通じるものがあります。
自分が感情を素直に出さない分、金之助や須藤先輩、琴子のような直情型の人間には意外とかなわないと思っているかもしれません。
よく考えたら入江くんの周りには、とんでもなく頭がいいか、バカか、
この二種類の人間しかいないような気がします。
ごく普通の人は入江くんには近づけないのでしょうか。…微妙なところです。
そして、夏休み、清里でのシーンになります。
私は入江くんが琴子のことが好きだと気づいたのはやはり清里だと思いたいんですね。
それまでいつのまにかいつも琴子が周りにいるのが当たり前だと思って過ごしていたのに、一人暮らしをするようになってから、琴子がいないときのいらいらした気分がどうにも無視できなくて。
徐々に好きなのかもしれないと自覚し始めて、それでもまだ認めたくなくて。
もしかしたらもしかして、「好き」という感情がこういうものだというのを本当に自覚していなかったりして。
なにせ「嫉妬」がわからなかったくらいですから。
それなのに寝ている琴子についキスしてしまった、と自分で勝手に思っています。
というか、そういう設定の下で私の二次小説は突っ走っています。
自覚していたとしても、眠っている間にするというのは、きっとまだ知られたくない気持ちだったんでしょうね。
ただ、私は入江くんというのは嘘をつかない人だと思っているので、自覚したらちゃんと本人に告げるような気もするのです。
まだこの時点では、入江くんがキスしたかどうかはわからないんですよね。
真っ赤な顔をした裕樹君がいるだけで、裕樹君がキスをしたんじゃないか説もありましたし。
まったく、入江くんは憎らしいほどのポーカーフェイスな男です。
だからこそこの4巻は、読むたびに入江くんがどんな風に思っていたかを繰り返し妄想してしまうのでした。
(2006.05.21)